特集 角膜移植の新しい潮流
4 培養ヒト角膜内皮細胞を用いた角膜内皮再生医療
上野 盛夫
1
1京都府立医科大学眼科学教室
キーワード:
水疱性角膜症
,
角膜内皮
,
培養ヒト角膜内皮細胞
,
細胞注入
,
再生医療
Keyword:
水疱性角膜症
,
角膜内皮
,
培養ヒト角膜内皮細胞
,
細胞注入
,
再生医療
pp.127-132
発行日 2025年2月5日
Published Date 2025/2/5
DOI https://doi.org/10.18888/ga.0000004045
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角膜内皮は角膜の裏面を被覆する単層の細胞層で,バリア機能とポンプ機能を有することによって角膜実質の含水率を一定に保ち,角膜の透明性を維持している。健常人の角膜内皮細胞は六角形を主とする多角形細胞で,2,000~3,000個/mm2の密度を保っている。ヒトやサルなどの霊長類の角膜内皮細胞の生体内での増殖能は乏しく,Fuchs角膜内皮ジストロフィなどの疾病・白内障手術などの内眼手術・外傷などによって角膜内皮が障害されると,角膜内皮細胞密度が低下する。角膜内皮細胞密度が500個/mm2以下になると角膜内皮機能不全に陥り角膜は不透明化する。そのような状態は水疱性角膜症とよばれ,重症の視力障害の原因となっている1)。水疱性角膜症に対する唯一の治療法は,ドナー角膜を用いた角膜移植であり,以前は全層角膜移植術が行われていたが,2000年頃よりDSAEK(Descemet stripping automated endothelial keratoplasty)などの角膜内皮移植術が広く行われるようになっている。これらの角膜移植術では,1人の患者を治療するために1眼のドナー角膜が必要であり,本邦では慢性的なドナー不足の状態が問題となっている。また水疱性角膜症に対する角膜移植は,移植後に角膜内皮細胞密度が減少するために長期予後が悪く,新規治療法の開発が望まれていた。
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