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Peripapillary hyperreflective ovoid mass-like structures(PHOMS)とintrapapillary hemorrhage with adjacent peripapillary subretinal hemorrhage(IHAPSH)とがみられた傾斜乳頭症候群の1例を経験したので報告する。11歳の女児が右眼の飛蚊症を主訴に受診した。視力は右(0.4),左(1.2)で軽度の近視眼であった。右眼は乳頭上に網膜前出血があり,一部硝子体中に及び,乳頭鼻側には乳頭を取り囲むように網膜下出血がみられた。左眼の視神経乳頭は傾斜乳頭であったが,右眼の視神経乳頭は出血のため確認できなかった。出血の形態から,近視化の始まった時期に生じたIHAPSHを疑い,保存的に経過観察した。初診1週後には右眼視力は(1.2)となり,硝子体出血と乳頭周囲の網膜前出血と網膜下出血は減少した。初診3週後には右眼の乳頭周囲の網膜前出血はほぼ消褪し,網膜下出血も器質化し,視神経乳頭が傾斜乳頭であることが観察された。光干渉断層計で,右眼は傾斜乳頭により乳頭鼻側に乳頭腫脹があり,腫脹部位の一部に点状の高反射を示す部分,乳頭鼻側に弧状の輪郭を呈する部分が観察され,PHOMSを伴っていると考えた。初診7週後に施行した光干渉断層血管撮影では,病変内に血流信号が確認され,右眼は傾斜乳頭にIHAPSHとPHOMSを伴った病態であると診断した。右眼の硝子体出血,乳頭周囲の網膜前出血と網膜下出血は徐々に軽快し,初診19週後には消失した。この時点の光干渉断層計と光干渉断層血管撮影で,右眼のPHOMSに変化はなく,左眼にもPHOMSが観察された。本症例の経験から,傾斜乳頭ではPHOMSを伴うことがあり,また,IHAPSHを呈することが明らかになった。
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