綜説
緑内障性視神経症の新しい病態論とそれに基づく神経保護治療の可能性
中村 誠
1
1神戸大学医学部眼科学教室
キーワード:
緑内障性視神経症
,
アストロサイト・神経間乳酸シャトル
,
モノカルボン酸輸送体
,
アクアポリン水チャンネル
,
網膜神経節細胞
,
メトホルミン
,
glaucomatous optic neuropathy
,
astrocyte-to-neuron lactate shuttle
,
monocarboxylate transporter
,
aquaporin water channel
,
metformin
Keyword:
緑内障性視神経症
,
アストロサイト・神経間乳酸シャトル
,
モノカルボン酸輸送体
,
アクアポリン水チャンネル
,
網膜神経節細胞
,
メトホルミン
,
glaucomatous optic neuropathy
,
astrocyte-to-neuron lactate shuttle
,
monocarboxylate transporter
,
aquaporin water channel
,
metformin
pp.999-1013
発行日 2024年10月5日
Published Date 2024/10/5
DOI https://doi.org/10.18888/ga.0000003807
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緑内障では,網膜神経節細胞(retinal ganglion cell:RGC)の軸索が篩状板において機械的ストレス,循環障害,グリア細胞機能障害に曝されることにより,視神経が障害され,特徴的な不可逆的視機能障害に陥る。この病態は緑内障性視神経症(glaucomatous optic neuropathy:GON)と呼ばれるが,近年,病変は視神経に留まらず,視放線や高次視中枢,さらには眼球運動中枢にも及ぶことが知られている。また,GONの発症・進行には,眼圧などの眼局所因子のみならず,自己免疫1)~3),メタボリック症候群4)5),生活習慣(喫煙や運動不足・過剰運動)6)7),腸内・口腔内細菌叢攪乱8)9)など,さまざまな全身因子が関与することがわかってきた。そして,こうした全身・眼局所因子が,炎症10)~12),ミトコンドリア機能・生合成障害13)14),オートファジー14)15),低酸素といった潜在的なメカニズムを誘導して,中枢神経系全般に及ぶGONを引き起こしているらしい。さらには,このような曝露因子と潜在機序は後天的に与えられるだけでなく,遺伝的要因16)によっても規定される。しかし,個々の曝露因子や潜在機序が単独でGON発症・進行に及ぼす影響は小さく,「超複雑系」疾患であるGONの全体像は捉え難い。そのため,我々は,いまだ眼圧下降以外に有効なGONの治療法を見出せずにいる。本稿では,GONを「乳酸代謝・情報伝達病」という概念から再定義し,そこからdrug repositioningによる神経保護治療を開拓する可能性について論じたい。
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