私の経験
自閉症偏食児のビタミンA欠乏症による重症眼球乾燥症・夜盲・視神経乳頭浮腫の1例
田中 瑛三
1
,
加藤 睦子
1
,
清水 壯洋
1
,
難波 倫江
1
,
尾内 千容
2
1日本赤十字社 岡山赤十字病院眼科(岡山県)
2岡山大学病院眼科
キーワード:
ビタミンA欠乏症
,
自閉症スペクトラム障害
,
眼球乾燥症
,
夜盲
,
視神経浮腫
,
全視野網膜電図
Keyword:
ビタミンA欠乏症
,
自閉症スペクトラム障害
,
眼球乾燥症
,
夜盲
,
視神経浮腫
,
全視野網膜電図
pp.767-773
発行日 2023年8月5日
Published Date 2023/8/5
DOI https://doi.org/10.18888/ga.0000003221
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ビタミンA欠乏症は,途上国における小児の視力障害の原因として現代でも問題となっているが,近年は自閉症スペクトラム障害(autism spectrum disorder:ASD)による偏食を原因とする症例も増加傾向である。今回,重症眼球乾燥症・夜盲・視神経乳頭浮腫を併発し,治療介入により各症状と光干渉断層計および網膜電図(ERG)所見の改善をみた症例を経験したので報告する。患者はASDを有する7歳の男児。夜盲,両眼痛を主訴に当院救急外来を受診。両眼ともに対光反応の軽度減弱と視神経乳頭浮腫,重症眼球乾燥症,左眼に軟化した角膜潰瘍,前房蓄膿を認め,視力右0.03(矯正不能),左測定不能であった。抗菌薬の点滴・頻回点眼とビタミンA製剤の内服を開始し,眼球乾燥症と角膜潰瘍が早急に改善した。ERGでは,杆体応答,フラッシュERG,錐体反応のすべてで低下がみられたが,半年後には正常波形に改善,偏食への介入等により乳頭浮腫も徐々に軽減し,矯正視力は右眼1.2,左眼0.8まで改善した。ASD児で角結膜障害を認めた場合,患児はビタミンA欠乏症である可能性を考えて,早期に診断し治療や栄養指導へと移行することが有効と考えられた。
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