症例報告
急性網膜壊死と鑑別を要したサイトメガロウイルス網膜炎の1例
高井 康行
1
,
佐久間 俊郎
2
,
朝比奈 裕美
2
,
碇 莉有
2
,
井上 賢治
1
,
海老原 伸行
2
1井上眼科病院(東京都)
2順天堂大学医学部附属浦安病院眼科
キーワード:
サイトメガロウイルス網膜炎
,
ウイルス性網膜炎
,
急性網膜壊死
,
慢性網膜壊死
Keyword:
サイトメガロウイルス網膜炎
,
ウイルス性網膜炎
,
急性網膜壊死
,
慢性網膜壊死
pp.761-766
発行日 2023年8月5日
Published Date 2023/8/5
DOI https://doi.org/10.18888/ga.0000003220
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急性網膜壊死(acute retinal necrosis:ARN)との鑑別を要したサイトメガロウイルス(CMV)網膜炎の症例を報告する。
患者は関節リウマチで免疫抑制剤を内服している72歳女性。4か月の経過で進行する左眼の虹彩炎,硝子体混濁,眼底周辺部の血管炎,白色顆粒状病変を認めたため紹介受診した。初診時矯正視力は左眼(0.3)と低下し,前眼部は左眼の角膜後面沈着物と前房内細胞を認めた。眼底は左眼で硝子体混濁に加えて,耳側優位で全周性の網膜周辺部の顆粒状白色病変がみられた。フルオレセイン蛍光眼底造影検査で耳側優位な周辺部からの蛍光漏出がみられた。前房水検体のウイルスポリメラーゼ連鎖反応(PCR)検査では,CMVが陽性だった。CMV網膜炎の診断でガンシクロビル点滴を2週間行うも,薬剤性の身体合併症をきたしたため,ガンシクロビル硝子体注射に変更した。眼底所見は改善傾向であったが,入院25日後に耳側の網膜剥離を認めたため,超音波乳化吸引術,眼内レンズ挿入術,硝子体切除術,網膜光凝固術,シリコーンオイル注入術,輪状締結術を行った。術後経過は良好であり,退院時の矯正視力は左眼(0.15)であった。
CMVによる慢性経過の急性網膜壊死様の周辺部顆粒状病変を伴う網膜炎症例があることから,前房水でのPCR検査を行うべきである。また網膜剥離は視力予後に関わるため,注意深い観察が必要である。
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