臨床報告
摂食障害が原因と考えられるビタミンA欠乏性眼球乾燥症の1例
平野 耕治
1
,
田中 秀典
1,2
,
岩味 未央
3
1藤田医科大学ばんたね病院眼科
2藤田医科大学眼科
3名古屋大学眼科
キーワード:
ビタミンA欠乏症
,
眼球乾燥症
,
摂食障害
,
神経性食欲不振症
,
パルミチン酸レチノール内服治療
,
夜盲
Keyword:
ビタミンA欠乏症
,
眼球乾燥症
,
摂食障害
,
神経性食欲不振症
,
パルミチン酸レチノール内服治療
,
夜盲
pp.763-769
発行日 2019年7月5日
Published Date 2019/7/5
DOI https://doi.org/10.18888/ga.0000001243
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要 約
神経性食欲不振症(anorexia nervosa:AN)に伴う摂食障害によるビタミンA欠乏が原因と考えられる眼球乾燥症を経験した。
症例は36歳女性。両眼の流涙,眼脂,疼痛を自覚し近医眼科で抗菌薬,副腎皮質ステロイド,ヒアルロン酸ナトリウム等の点眼治療を受けたが愁訴は増強し,角膜混濁が出現してきたため藤田医科大学ばんたね病院眼科を紹介された。初診時視力は右0.04(矯正不能),左0.2 (0.4)。角結膜は高度に乾燥し,一部に角化を伴っていた。Schirmerテストは左右とも30mm以上であった。消化器系疾患,腎疾患等の既往はないとのことだったが,角結膜所見からビタミンA欠乏性眼球乾燥症を疑いパルミチン酸レチノール2万単位/日の内服を2週間続けたところ,眼球乾燥の所見は劇的に改善し,視力も裸眼で両眼とも1.0が得られるようになった。所見および視機能の改善が得られた時点で患者からANの既往があったことを伝えられた。なお,夜盲の自覚はなく,内服開始後2週間経過しての血中レチノール結合蛋白は2.3mg/dL(基準値1.9~4.6)であった。
パルミチン酸レチノール内服により短期間に改善が得られたことから,ビタミンA欠乏性眼球乾燥症と診断した。ANは近年わが国でも増加の傾向にあり,ドライアイの鑑別疾患として本症によるビタミンA欠乏症も考慮に入れておくべきである。
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