症例報告
18年間の長期にわたり観察したWagner症候群の1例
高橋 亜以里
1
,
櫻田 庸一
1
,
柏木 賢治
1
1山梨大学医学部眼科学講座
キーワード:
Wagner症候群
,
遺伝性疾患
,
網膜硝子体変性
,
網膜剥離
,
Humphrey静的視野検査
Keyword:
Wagner症候群
,
遺伝性疾患
,
網膜硝子体変性
,
網膜剥離
,
Humphrey静的視野検査
pp.1099-1105
発行日 2022年11月5日
Published Date 2022/11/5
DOI https://doi.org/10.18888/ga.0000002861
- 有料閲覧
- 文献概要
- 1ページ目
- 参考文献
Wagner症候群は硝子体の液化を特徴とする常染色体優性遺伝の網膜変性疾患であり,1938年にWagnerによって初めて報告された,VCAN遺伝子の変異を原因とする疾患である。当院において18年の長期観察を行った1例について臨床的特徴と経過を報告する。
症例は30歳女性。2003年7月,右眼飛蚊症を自覚し近医を受診。両眼の網膜硝子体変性の精査目的で当院紹介受診となる。初診時矯正視力は右0.7/左0.9,両眼に硝子体変性,網膜萎縮を認めたが,網膜裂孔や網膜剥離の所見は認めず。家族歴として父親は以前Wagner症候群の診断を受けており,右眼網膜剥離と左眼硝子体変性の既往があり,加えて父方の叔父,祖父,曾祖父にも網膜剥離の既往があった。家族歴,臨床所見より父親同様Wagner症候群の診断となった。
経過中に両眼後嚢下白内障の進行に伴い視力低下をきたし,両眼の白内障手術を施行した。両眼とも網脈絡膜萎縮と視野狭窄の緩徐な進行を認めるものの,視力低下や網膜剥離は認めていない。今後も経過を観察し,症例を重ねて検討を進めることが本疾患の予後や病態の解明に役立つものと考えられた。
Copyright © 2022, KANEHARA SHUPPAN Co.LTD. All rights reserved.