原著論文
正常眼圧緑内障において線維柱帯切除術が散瞳後の眼圧に与える影響
上田 晃史
1,2
,
坂田 礼
1,4
,
藤田 あさひ
1
,
中島 康介
3
,
藤代 貴志
1,4
,
本庄 恵
1,4
,
白土 城照
4
,
相原 一
1,4
1東京大学医学部付属病院眼科
2宮田眼科病院(都城市)
3杏林大学医学部付属病院眼科
4四谷しらと眼科(東京都新宿区)
キーワード:
正常眼圧緑内障
,
線維柱帯切除術
,
散瞳
,
眼圧変動
Keyword:
正常眼圧緑内障
,
線維柱帯切除術
,
散瞳
,
眼圧変動
pp.1091-1097
発行日 2022年11月5日
Published Date 2022/11/5
DOI https://doi.org/10.18888/ga.0000002860
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背 景
線維柱帯切除術は眼圧を下げるだけではなく,眼圧変動を抑えることができる術式であるとされている。今回,日本人の正常眼圧緑内障(normal tension glaucoma:NTG)眼において,線維柱帯切除術が散瞳後の眼圧に与える影響を検討した。
対象と方法
線維柱帯切除術前後で5年以上経過観察が可能であったNTG患者を対象とした。全例,緑内障点眼薬治療後(点眼治療期)に,マイトマイシンC併用線維柱帯切除術を施行した(外科的治療期)。各治療期間における散瞳時と無散瞳時の平均眼圧を算出し,散瞳時と無散瞳時の平均眼圧差を眼圧変動と定義した。この眼圧変動をpaired t-testまたはWilcoxon signed-rank testを用いて評価した。
結果
NTG患者23名23眼(平均年齢62.4歳)を対象とした。平均治療期間は点眼治療期が5.7年,外科的治療期が6.1年であった。点眼治療期の無散瞳時の平均眼圧は14.2±1.8mmHg(平均±標準偏差),散瞳時の平均眼圧は14.5±1.8mmHgで,散瞳時に有意な眼圧上昇を認めた(散瞳時−無散瞳時:0.30±0.11mmHg,P=0.009)。一方,外科的治療期の平均眼圧は9.0±2.5mmHg,散瞳時の平均眼圧は9.1±2.4mmHgであり,その差は0.18±0.16mmHg(P=0.28)であった。
結論
NTG眼において,線維柱帯切除術は散瞳による眼圧変動を抑制する可能性が考えられた。
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