- 有料閲覧
- 文献概要
- 1ページ目
- 参考文献
- サイト内被引用
特発性視神経炎において,視機能回復までの期間を短縮させる目的でステロイドパルス療法が行われる。しかし,その治療に反応せず,視機能の回復に乏しい症例が存在する。今回我々は,ステロイドパルス療法抵抗性視神経炎に単純血漿交換療法(PE)を試みた症例について報告する。
症例は,35歳の女性。眼球運動時痛および左眼の見えにくさを主訴に近医受診し,精査加療目的で東京慈恵会医科大学葛飾医療センターを受診した。初診時の矯正視力は右1.2,左0.1で,左相対的瞳孔求心路障害は陽性であった。眼底検査では異常なく,Goldmann視野検査で左眼の鼻側下方視野欠損を認めた。抗ミエリンオリゴデンドロサイト糖蛋白抗体ならびに抗アクアポリン4抗体は陰性で,その他の自己抗体も陰性であった。頭部MRIのSTIR脂肪抑制画像において左視神経に高信号域がみられ,造影T1強調画像でも造影効果を認めた。急性期球後視神経炎と診断しステロイドパルス療法を実施するも,左矯正視力は0.02まで低下し,視野欠損の拡大も認めた。経過中手足のしびれの訴えがあったことから中枢神経系炎症性脱髄疾患の可能性も考慮した。プレドニゾロン内服の後療法と並行し,発症14日後より計7回のPEを施行した。矯正視力は0.1に改善,視野障害も著しく改善した。プレドニゾロン内服の漸減投与終了後も再発はみられなかったが,最終的に視神経萎縮を生じた。
初回ステロイドパルス療法に抵抗性を示した難治性視神経炎の症例を経験した。最終的に特発性球後視神経炎と診断されたが,PE施行前の時点では,多発性硬化症や視神経脊髄炎関連スペクトラム障害の可能性も考慮してPE導入に至った。PE導入の際には,腎臓内科医との連携が不可欠である。
Copyright © 2022, KANEHARA SHUPPAN Co.LTD. All rights reserved.