私の経験
Lacquer crackを伴う病的近視眼でみられた網膜の移動
岩見 千丈
1
,
妹尾 佳平
1
,
山下 あさひ
2
1北上済生会病院眼科(北上市)
2岩手県立中部病院眼科(北上市)
キーワード:
ラッカークラック
,
網膜の移動
,
Bruch膜
,
lacquer crack
,
retinal shift
,
Bruch membrane
Keyword:
ラッカークラック
,
網膜の移動
,
Bruch膜
,
lacquer crack
,
retinal shift
,
Bruch membrane
pp.189-198
発行日 2022年2月5日
Published Date 2022/2/5
DOI https://doi.org/10.18888/ga.0000002503
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病的近視眼で黄斑部付近にlacquer crack(以下LC)が発生・進行した症例の網膜の移動について検討した。
病的近視眼で,経過観察中に黄斑部付近にLCが発生・進行した4症例,8眼(等価球面度数-11~-17D)の,5~7年経過した前後の眼底写真を対象とした。眼底写真をflicker chronoscopy法やstereo chronoscopy法で観察することで,網膜血管の位置変化を検出した。
8眼すべてで,上下のvascular arcade(以下vas.arc.)付近の脈絡膜組織は互いに離反したが,そのうち6眼の同一部位の網膜血管は逆に接近した。他の2眼では上下のvas.arc.付近の網膜血管は互いに離反し,そのうち1眼には下耳側に内境界膜剥離があり網膜が牽引されていたことから,それが網膜血管離反の原因と思われた。
網膜血管が互いに接近した6眼中5眼では,より細い血管のほうが移動の程度は小さく,網膜の層が変形していることが示された。その原因としては網膜の外層にはBruch膜の同心円的な膨張による伸展の力学が働く一方で,網膜神経線維層には乳頭-中心窩間距離の延長に伴う網膜の上下方向への圧縮の力学や,網膜の伸展を抑制する内境界膜の力学が働いていることが考えられる。
今回の結果から,後部ぶどう腫の進行に伴い,上下のvas.arc.付近の脈絡膜が互いに離反し,Bruch膜も多少は拡張するのに対して,同一部位の網膜は視神経線維層を中心にして拡張に抵抗し,圧縮している可能性があることが示された。
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