症例報告
診断ならびに治療に難渋したMycobacterium chelonaeによる角膜潰瘍の1例
宮瀬 太志
1
,
坂井 翔太
1
,
小澤 憲司
1
,
望月 清文
1
,
大楠 清文
2
,
外園 千恵
3
,
坂口 裕和
1
1岐阜大学医学部附属病院眼科
2東京医科大学微生物学分野
3京都府立医科大学大学院医学研究科視機能再生外科学
キーワード:
Mycobacterium chelonae
,
2週間交換ソフトコンタクトレンズ
,
角膜潰瘍
,
two weekly contact lens
,
keratitis
Keyword:
Mycobacterium chelonae
,
2週間交換ソフトコンタクトレンズ
,
角膜潰瘍
,
two weekly contact lens
,
keratitis
pp.173-179
発行日 2022年2月5日
Published Date 2022/2/5
DOI https://doi.org/10.18888/ga.0000002501
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診断ならびに治療に難渋したMycobacterium chelonaeによる角膜潰瘍の1例を経験したので報告する。
症例は58歳女性。併存症,眼科手術歴および外傷歴はなく,2週間交換ソフトコンタクトレンズ(SCL)装用者であった。左眼の眼痛・羞明・充血を訴え近医眼科を受診し加療を受けるも通院を中断し,1か月後に近隣の総合病院の眼科を受診した。抗菌薬,抗ウイルス薬およびステロイド薬の局所投与で改善せず紹介受診となった。受診時の左眼矯正視力は0.07で左眼角膜中央部に浸潤性病変を認め,角膜後面沈着物および中等度の前房内炎症細胞を伴っていた。同日行った角膜擦過物ならびに前房水の網羅的PCRならびに培養検査では,角膜擦過物から細菌16Sが検出された。しかし履歴からアカントアメーバを最も疑い,まずステロイド点眼を中止した。数日後炎症の悪化をみて再度角膜擦過物ならびに前房水の再検索を行った(後日すべて陰性)。初診から13日後,初回の角膜擦過物から抗酸菌(のちにMycobacterium chelonaeと同定)が検出された。アミノ配糖体薬ならびにマクロライド系薬の局所投与およびスルファメトキサゾール・トリメトプリム内服を開始した。しかし病状は改善せず,アミカシンおよびイミペネム点眼を加えクラリスロマイシン,リネゾリドならびにシタフロキサシン内服へ変更したところ,角膜は瘢痕化し最終診察時の左眼矯正視力は0.4であった。
SCLの装用ならびにステロイド点眼薬の使用歴を有する難治性角膜潰瘍では,非結核性抗酸菌も起炎菌として考慮すべきである。
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