症例報告
重篤な片眼性視力障害をきたした特発性肥厚性硬膜炎の2例
林 孝彰
1
,
徳久 照朗
1
,
須田 真千子
2
1東京慈恵会医科大学葛飾医療センター眼科
2東京慈恵会医科大学葛飾医療センター脳神経内科
キーワード:
視力障害
,
頭痛
,
中心暗点
,
視神経障害
,
免疫抑制剤
Keyword:
視力障害
,
頭痛
,
中心暗点
,
視神経障害
,
免疫抑制剤
pp.987-996
発行日 2021年10月5日
Published Date 2021/10/5
DOI https://doi.org/10.18888/ga.0000002302
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肥厚性硬膜炎は,比較的まれな疾患で,原因疾患の特定できる続発性と原因不明の特発性に分類される。初発症状として,頭痛と視力障害が多い。今回,重篤な左眼視力障害をきたした特発性肥厚性硬膜炎の2例について報告する。症例1は62歳女性で頭痛と左視力低下を主訴に,症例2は69歳女性で左眼痛と左視力低下を主訴に,当院を初診した。両症例とも,左眼視力障害,左眼の相対的瞳孔求心路障害を認めたが,前眼部・中間透光体・眼底に異常所見はみられなかった。血液検査では炎症反応以外に有意な所見はなかった。頭部・眼窩造影磁気共鳴画像(MRI)検査で,高信号を示した肥厚硬膜,左眼窩先端部ならびに左視神経周囲に高信号を認めた。感染性を含めた続発性肥厚性硬膜炎が否定されたことから,両症例とも特発性肥厚性硬膜炎に続発した左眼窩先端部炎・左視神経周囲炎と診断された。ステロイド治療によって視力は改善し,症例1では左眼矯正視力は治療前の0.06から1.5まで回復し,症例2ではステロイド漸減中に再燃を繰り返したが,免疫抑制剤との併用により左眼矯正視力は治療前の0.01から0.5まで改善した。肥厚性硬膜炎は,原因不明の視力低下の原因として鑑別に挙げるべき疾患のひとつである。診断には,造影MRI検査が有用である。
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