症例報告
眼部帯状疱疹後に高度のドライアイを生じた造血幹細胞移植後の1例
五十嵐 鎮秀
1
,
細谷 友雅
1
,
吉村 彩野
1
,
五味 文
1
1兵庫医科大学眼科学教室
キーワード:
眼部帯状疱疹
,
造血幹細胞移植
,
ドライアイ
,
角膜上皮障害
,
移植片対宿主病
,
免疫応答
Keyword:
眼部帯状疱疹
,
造血幹細胞移植
,
ドライアイ
,
角膜上皮障害
,
移植片対宿主病
,
免疫応答
pp.67-72
発行日 2022年1月5日
Published Date 2022/1/5
DOI https://doi.org/10.18888/ga.0000002461
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眼部帯状疱疹が誘因となり,造血幹細胞移植後の患者に片眼性の高度な角膜上皮障害とドライアイを生じた症例を報告する。患者は29 歳男性。7 年前に左下肢原発悪性リンパ腫に対し造血幹細胞移植を施行され,原疾患は寛解し,移植片対宿主病(graft versus host disease:GVHD)は発症なく経過していた。初診2 日前より左眼と鼻の奥の痛みを自覚し当科を受診。矯正視力は右眼(1.2),左眼(1.0)で,左眼瞼から頬部の腫脹と左眼の結膜浮腫を認めた。急性結膜炎と考え,点眼治療を開始した。1 週間後,鼻尖部と左前額部に皮疹が出現し,左眼矯正視力は(0.1)に低下,左視神経炎を認めた。眼部帯状疱疹と診断し,バラシクロビルとプレドニゾロンの内服を開始した。28 日後結膜浮腫は改善したが,左眼角膜中央部の上皮欠損と高度の点状表層角膜症が出現し,瞼縁の角化も生じた。Schirmer試験値は右眼11 mm,左眼5 mm であった。GVHD の可能性を考えたが,血液内科でGVHD の発症は否定された。治療用ソフトコンタクトレンズや涙点プラグを併用し,角膜所見は徐々に改善した。経過中,右眼に病的所見は認めなかった。ウイルスの再活性化が局所的な眼表面炎症や上皮間葉移行のトリガーとなり,涙腺導管の閉塞や眼表面のムチン発現の変化などを生じ,片眼性に角膜上皮障害と高度なドライアイが生じたと考えた。
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