症例報告
ドルゾラミド点眼後に網膜内嚢胞様変化が消失した50歳代の先天網膜分離症
大坪 充
1
,
木ノ内 玲子
2,3
,
石居 信人
2
,
吉田 晃敏
2
1市立稚内病院眼科(稚内市)
2旭川医科大学眼科学講座
3旭川医科大学医工連携総研講座
キーワード:
先天網膜分離症
,
後部硝子体剥離
,
光干渉断層計
,
ドルゾラミド点眼
Keyword:
先天網膜分離症
,
後部硝子体剥離
,
光干渉断層計
,
ドルゾラミド点眼
pp.165-172
発行日 2020年2月5日
Published Date 2020/2/5
DOI https://doi.org/10.18888/ga.0000001551
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片眼にのみ広範な網膜分離所見を認め,その後の2年間遷延した網膜分離所見が1%ドルゾラミド点眼後に消失した50歳代の先天網膜分離症を報告する。
55歳男性。2年前からの右眼の変視と半年前からの視力低下を自覚し,旭川医大眼科を初診した。矯正視力は右0.3,左1.2で,両眼底周辺部に銀箔様反射を認め,光干渉断層計(OCT)では右眼に,傍中心窩後部硝子体剥離(perifoveal posterior vitreous detachment:perifoveal PVD)と眼底後極部広範に網膜分離所見(内顆粒層と外顆粒層に嚢胞様変化)を認めた。左眼では上方の周中心窩の網膜内に嚢胞様変化をわずかに認めた。蛍光眼底造影検査では蛍光漏出や貯留は認めず,全視野網膜電図では両眼の陰性型波形を認めることから,先天網膜分離症と診断した。右眼はPVDが完成後,中心窩の嚢胞様変化は一時軽快したが,中心窩周囲に広範に認める網膜内の嚢胞様変化は遷延した。その後中心窩の嚢胞様変化も再発し,初診2年後,右眼に1%ドルゾラミド点眼を開始した。点眼開始2か月後には,中心窩周囲に広範にみられていた網膜内の嚢胞様変化は消失し,点眼開始後1年半経過したが再発を認めていない。
先天網膜分離症としては高齢で見つかり,網膜分離所見の左右差が著明な症例であった。中心窩の所見は変動したが,中心窩周囲に広範にみられた網膜分離所見は遷延し,1%ドルゾラミド点眼を開始したところ,速やかに消失した。ドルゾラミド点眼は先天網膜分離症に試してみる価値のある治療と考えられた。
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