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糖尿病患者は全世界的に増加の一途をたどり2035年には患者数が約6億人に達することが予測されている1)。近年の硝子体手術などの治療の進歩により多くの患者は増殖糖尿病網膜症による失明を回避可能となりつつある。一方,糖尿病黄斑浮腫(diabetic macular edema:DME)は糖尿病網膜症の全進行過程で認められ,糖尿病患者の約10~26%,単純糖尿病網膜症の段階であっても6%程度に生じ,視力低下の原因となるといわれ2),増殖糖尿病網膜症のように失明の原因とまではなりにくいが就労年齢層での社会的失明の原因として問題となる3)。DMEの病態は複雑で,血管透過性亢進・血管閉塞による血流障害・膠質浸透圧低下・後部硝子体膜の牽引などさまざまな要因が関与して起こることが知られている。なかでも,血管内皮増殖因子(vascular endothelial growth factor:VEGF)の血管透過性亢進作用がDME発症に果たす役割は大きく,近年の大規模臨床研究における抗VEGF薬の良好な治療効果もこのことを裏付けている。従来,DMEは網膜局所光凝固(毛細血管瘤直接凝固/グリッド凝固)やステロイド局所投与により治療が行われてきたが,実臨床の場では難治性の症例も散見された。本邦ではDME治療における抗VEGF薬としてafliberceptとranibizumabが使用の認可を受けており,その良好な治療効果から抗VEGF薬治療はわが国においてもDME治療における第一選択となりつつある4)。本稿ではDMEに対する抗VEGF薬治療についてafliberceptとranibizumabの比較を交えながら解説する。さらに,今後,臨床の場に登場する可能性のある新しい抗VEGF薬についても概説する。
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