綜説
糖尿病黄斑浮腫に対するport delivery systemを用いたあたらしい治療
志村 雅彦
1
1東京医科大学八王子医療センター眼科
キーワード:
PDS
,
眼内インプラント
,
糖尿病黄斑浮腫
,
抗VEGF薬
,
ドラッグデリバリー
Keyword:
PDS
,
眼内インプラント
,
糖尿病黄斑浮腫
,
抗VEGF薬
,
ドラッグデリバリー
pp.557-563
発行日 2023年6月5日
Published Date 2023/6/5
DOI https://doi.org/10.18888/ga.0000003158
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糖尿病黄斑浮腫(diabetic macular edema:DME)は糖尿病網膜症(diabetic retinopathy:DR)の合併症のひとつであり,DRの進行度に関わらず,視力に直接影響する黄斑部に浮腫が生じて中心視力の低下をもたらすことから社会的な影響の大きい疾患である。高血糖による網膜血管の損傷から網膜虚血を生じるDRでは,虚血の相対的な改善を目的に行う網膜光凝固,網膜虚血から生じた新生血管の破綻に伴う硝子体出血や増殖硝子体網膜症に対する硝子体手術,といった治療法が有効であることが1980年代までに確立されていたのに対し,DMEに対する治療法の確立は遅く,1980年代の黄斑部光凝固に始まり1),1990年代に硝子体手術の有効性が報告された2)が,いずれも病状の増悪を抑制する治療法でしかなく,改善がみられたとしても一時的であり,20世紀末になって抗炎症ステロイド点眼の局所投与によって著明な視力の改善が報告されるようになった3)が,白内障の進行と眼圧上昇というステロイド治療による合併症の問題があった。そんななか,21世紀に入るとDMEの硝子体中のVEGF濃度が高値を示すという報告4)がなされ,これに基づき抗VEGFヒト化モノクローナル抗体であるbevacizumabを硝子体内投与することで,DMEが劇的に改善されることが判明した5)。
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