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糖尿病網膜症(diabetic retinopathy:DR)は本邦における失明原因の上位に位置し,特に糖尿病黄斑浮腫(diabetic macular edema:DME)は視機能低下を生ずる代表的病態である。1980 年代にEarly Treatment Diabetic Retinopathy Studyにより黄斑局所網膜光凝固の有効性が報告され,永らくDME 治療の中心であったが,視機能改善を得られない症例も多くDME は依然,難治性の疾患であった。しかし,近年,血管内皮増殖因子(vascular endothelial growth factor:VEGF)がDME の発症と進展に関与することが明らかとなり,抗VEGF 薬の硝子体投与が第一選択治療となった。ベバシズマブ(アバスチンⓇ,Genentech,South San Francisco, CA, USA),ラニビズマブ(ルセンティスⓇ,Genentech),アフリベルセプト(アイリーアⓇ,Regeneron,Tarrytown,NY)が治療に用いられ,その有効性が報告されている。しかし,代表的な抗VEGF 薬であるラニビズマブの成績を報告したDRCR.net protocol I では,長期連続投与にもかかわらず中心窩網膜厚(central retinal thickness:CRT)が250 μm 以下になるのは症例の60%に過ぎず1),抗VEGF 薬は必ずしもすべての症例に有効というわけではないことが示唆されている。これらの薬剤はVEGFをターゲット分子としている点は共通しているが,分子性状が異なるため作用様式も異なり,効果は必ずしも同等ではない。投与した一剤に対し効果が乏しい場合には他の抗VEGF 薬への切り替え(スイッチング)により効果が得られることが期待される。このように単一薬剤での治療効果が弱い症例や副作用発現症例に対する類似の同効薬剤間でのスイッチングは珍しいものではなく,他科疾患である多発性硬化症などでの有効性が知られている2)。しかしDME に対する抗VEGF 薬のスイッチングに関する報告はまだ少ない。
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