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症例は78歳男性で、4日前から全身倦怠感が出現し、自宅で左側臥位で倒れたところを発見され救急搬送され、精査のため入院した。左腸骨部に潰瘍があり、4×5cm大の黒色壊死組織を付す褥瘡があった。両足底、左下腿、左側胸部には皮下出血があった。頭部MRIで左慢性硬膜下血腫が指摘され、臨床像から褥瘡と診断し、スルファジアジン銀クリームを外用し、1週間後に黒色壊死組織を除去した。デブリードマン後から1週間、潰瘍から静脈性出血が続き、頻回の結紮止血を要した。血小板数、出血時間、PT-INRは正常であったが、APTTが57.7秒と延長していたことから後天性血友病ほかの凝固異常を疑い精査した。von Willebrand因子(vWF)226%、第VIII因子活性1%、第VIII因子インヒビター5BU/ml以上で、結果から後天性血友病Aと診断した。基礎疾患として自己免疫疾患や悪性腫瘍の併発を疑ったが抗核抗体、抗ds-DNA抗体、抗Sm抗体、抗SS-A抗体、抗SS-B抗体、抗ARS抗体、抗カルジオリピンβ2抗体、ループスアンチコアグラントがいずれも陰性で、腫瘍マーカーCEA、CA19-9、CA72-4の上昇もなく、明らかな悪性腫瘍も指摘されなかった。治療開始前にAPTTは76.2秒まで延長しており、プレドニゾロン(PSL)内服を開始した。2週後APTTは55.0秒まで短縮したが、第VIII因子インヒビターが5BU/ml以上と効果不十分のため、シクロホスファミドを併用した。2ヵ月後APTTは31.6秒まで短縮したため、PSLを減量し、3ヵ月後にはAPTT 27.2秒、第VIII因子インヒビター173%まで回復し、第VIII因子インヒビター検出感度以下となった。褥瘡はその後、出血しなくなり徐々に縮小し、初診3ヵ月後に治癒した。
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