症例
観血的整復を要した遠位橈尺関節背側脱臼の1例
小杉 健二
1
,
目貫 邦隆
,
田島 貴文
,
平澤 英幸
,
善家 雄吉
,
酒井 昭典
1産業医科大学 整形外科
キーワード:
関節鏡法
,
内固定法
,
尺骨骨折
,
脱臼
,
X線CT
,
縫合法
,
三角線維軟骨複合体
,
スーチャーアンカー
,
下橈尺関節
Keyword:
Arthroscopy
,
Joint Dislocations
,
Fracture Fixation, Internal
,
Suture Techniques
,
Ulna Fractures
,
Tomography, X-Ray Computed
,
Triangular Fibrocartilage
,
Suture Anchors
pp.1557-1561
発行日 2016年10月1日
Published Date 2016/10/1
DOI https://doi.org/10.18888/J00767.2017077520
- 有料閲覧
- 文献概要
- 1ページ目
17歳男性。自宅2階ベランダから飛び降りて受傷、頭蓋底骨折、左急性硬膜外血腫の診断で同日緊急手術となったが、受傷10日後に右手関節の腫脹疼痛を主訴に著者らの施設へ紹介となった。初診時、単純X線像では遠位橈尺関節部で橈骨に対して尺骨頭の背側脱臼を認め、同日徒手整復を試みたが整復不能であった。単純CTでは有鉤骨鉤骨折および有頭骨骨折、小菱形骨骨折を認めたが、いずれも転位なく保存加療とした。また、尺骨茎状突起は基部で骨折し、徒手整復不能で観血的整復の方針で、受傷後18日目に手術の施行となった。術中所見では伸筋支帯は破綻し、尺骨茎状突起と三角線維軟骨複合体(TFCC)を含む軟骨組織構造体は解剖学的位置にスリーブ状に残存し、尺骨頭のみが背側に脱臼し露出しており、尺側手根伸筋は腱鞘ごと尺骨頭の掌尺側に転位が認められた。そして、尺骨頭の掌側には横走する靱帯組織が介在して整復阻害因子となり、TFCCは尺骨小窩付着部で断裂していた。以上の所見を踏まえて、手関節鏡用牽引タワーを用いて持続的に牽引しながら尺骨頭と靱帯組織間にエレバトリウムを用いて梃子の要領で尺骨頭を押し込みながら回外位にて整復を行ったところ、靱帯組織は切離せずに整復可能であった。目下、術後4ヵ月経過で握力は健側比:61.5%、ROM:掌屈90°、背屈80°、前腕回内70°、回外60°で、再脱臼なく経過良好である。
Copyright © 2016, KANEHARA SHUPPAN Co.LTD. All rights reserved.