特集 循環器疾患を有する患者の妊娠・出産
識る 循環器疾患合併妊娠とガイドライン
丹羽 公一郎
1
1聖路加国際病院 心血管センター
キーワード:
妊娠合併症-心臓血管系
,
診療ガイドライン
Keyword:
Pregnancy Complications, Cardiovascular
,
Practice Guidelines as Topic
pp.355-360
発行日 2017年4月9日
Published Date 2017/4/9
DOI https://doi.org/10.18885/J03097.2017201287
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妊娠出産を経験する心疾患には,胎児期より形態異常を伴う先天性心疾患や遺伝子異常を伴うが小児期発症である心疾患などが少なくない。先天性心疾患を中心とした小児期発症心疾患の多くが,成人期を迎えるようになった。これら患者の半数は女性のため,妊娠出産も多く経験される。妊娠出産時は,心拍出量増加など血行動態的な変化や凝固能亢進などの変化が生じる。子宮収縮や出血などにより,出産時は急激な血行動態の変化が生じる。育児に伴う負担も大きい。心疾患は,心血管系の異常を伴うため,これらの変化の影響を受けやすく,心不全,不整脈,血栓形成などの合併症を伴いやすい。心疾患は形態,機能的に異なる多くの疾患が含まれている。そのそれぞれにより妊娠出産のリスクも異なり,一般と同様の妊娠出産が可能な疾患から妊娠は控えたほうがよいと思われる疾患,さらに,再手術を含む治療を妊娠前に行っておく必要がある疾患などにわかれている(表1)。服用中の薬剤の胎児に対する影響や授乳による移行,再発危険率も大きな問題である。心疾患の妊娠出産経験が集積し,それに基づく心疾患の妊娠出産の管理ガイドラインにより適正なカウンセリングや妊娠出産管理が行われるようになってきている。日本では改訂版が使われているが,本稿ではガイドラインの作成に関する歴史的経過,特徴,欧米との違いなどを中心に述べる。
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