特集 循環器疾患を有する患者の妊娠・出産
治す 循環器疾患合併妊婦の妊娠・分娩管理 血管系疾患
桂木 真司
1
,
吉松 淳
,
池田 智明
1榊原記念病院 産婦人科
キーワード:
Marfan症候群
,
Valsalva洞
,
遺伝相談
,
血栓塞栓症
,
妊娠合併症-心臓血管系
,
肺塞栓症
,
抗リン脂質抗体症候群
,
ハイリスク妊娠
,
妊娠前管理
,
大動脈置換術
Keyword:
Genetic Counseling
,
Marfan Syndrome
,
Pregnancy Complications, Cardiovascular
,
Pulmonary Embolism
,
Thromboembolism
,
Sinus of Valsalva
,
Antiphospholipid Syndrome
,
Preconception Care
,
Pregnancy, High-Risk
pp.409-419
発行日 2017年4月9日
Published Date 2017/4/9
DOI https://doi.org/10.18885/J03097.2017201295
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妊産婦の危機的な血管系の合併症として急性大動脈解離,肺動脈血栓塞栓症が挙げられる。2010年から2014年の妊産婦死亡213例のうち,前者は12例,後者は19例であり,両疾患で全体の15%を占める。わが国の分娩数は年間約100万件であるが,生存例も合わせると年間に1,000例以上の妊産婦が1年間に両疾患を発症していると推測される。急性大動脈疾患の代表疾患はMarfan症候群である。Marfan症候群は15番染色体の長腕に位置するFBN 1(fibrillin-1)の遺伝子変異による常染色体優性遺伝の結合組織病である。これらの変異は体の支持組織の脆弱性につながり,臨床的には心血管系,筋骨格系,眼症状を呈する。心血管系の合併症がMarfan症候群の患者において罹患率と致死率に最も影響を与える因子である。大動脈病変に対する予防的手術が確立される以前は,大動脈解離,大動脈破裂,心不全などが主要な死亡原因であり,Marfan症候群患者における平均寿命は40歳以下であった。遮断薬治療と手術療法のためにその後平均寿命は健常者とほぼ等しくなってきている。Marfan症候群合併妊娠において,大動脈解離の頻度が高い。妊娠中の大動脈径(≧40mm),大動脈径の拡張速度が速いものが大動脈解離のリスクであると報告されている。深部静脈血栓症は妊娠中いずれの時期にも起こりうる。本稿では病態の特徴,予防法について述べる。
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