特集 成人先天性心疾患 正確な患者評価から適切な治療へ
識る 先天性心疾患患者の妊娠と出産 可能性と限界
吉松 淳
1
1国立循環器病研究センター 周産期・婦人科部
キーワード:
Eisenmenger症候群
,
血液循環
,
妊娠管理
,
心臓疾患-先天性
,
妊娠合併症-心臓血管系
,
ハイリスク妊娠
,
妊娠転帰
,
Fontan手術
,
人工弁置換術
,
妊産婦死亡
Keyword:
Blood Circulation
,
Eisenmenger Complex
,
Heart Defects, Congenital
,
Pregnancy Outcome
,
Pregnancy Complications, Cardiovascular
,
Prenatal Care
,
Fontan Procedure
,
Pregnancy, High-Risk
,
Heart Valve Prosthesis Implantation
,
Maternal Death
pp.509-512
発行日 2017年5月9日
Published Date 2017/5/9
DOI https://doi.org/10.18885/J03097.2017220952
- 有料閲覧
- 文献概要
- 1ページ目
妊娠中には生理的にさまざまな変化が起こるが,その多くは心臓に対する負荷の増大につながる。正常心機能であれば耐えられる妊娠中の循環系への負荷に耐えられない場合,心不全などの心血管系のイベントが発生し,妊娠の中断を余儀なくされる可能性がある。その時期によっては早産となり,新生児には未熟性に伴うさまざまな合併症が発生しうる。ガイドラインには,妊娠は厳重な注意を要する,あるいは,妊娠を避けることが強く望まれる疾患として表1に示す疾患を挙げている。Eisenmenger症候群では母体死亡率は約30~50%である。流出路狭窄では妊娠,分娩に際して体循環を維持できなくなり循環虚脱から死亡する可能性がある。NYHA心機能分類III~IV度では,妊産婦死亡率が6.8%との報告がみられる。Marfan症候群ではValsalva径が40mmを超えると破裂のリスクが高まる。機械弁では高度な抗凝固療法が必要となるが,不十分だと弁血栓を形成し,過剰だと出血性の合併症を発症する。チアノーゼ性心疾患で酸素飽和度<85%では胎児への酸素供給が確保できず流産率が高く,胎児発育不全(fetal growth restriction;FGR)を高率に発症する(表1)。本稿では妊娠が先天性心疾患に与える影響,また,先天性心疾患が妊娠に与える影響の双方から,どのような管理が求められ,どこまでの心疾患で妊娠が許容できるのかを解説する。
Copyright© 2017 MEDICAL VIEW CO., LTD. All rights reserved.