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心房細動(atrial fibrillation;AF)に対するカテーテルアブレーションの有効性, 安全性はほぼ確立され,わが国の『カテーテルアブレーションの適応と手技に関 するガイドライン(JCS 2012)』1)は,高度の左房拡大や高度の左室機能低下を 認めず,かつ重症肺疾患のない薬物治療抵抗性の有症候性の発作性心房細動で, 年間50例以上の心房細動アブレーションを実施している施設で行われる場合, をクラスⅠ適応に位置づけている。現在約400の施設で年間4万件以上のAFア ブレーションが実施されていると想定されているが,ここで問題となるのが術前, 術中,術後の抗凝固管理である。2010年の16 , 309例,20 , 825件のAFアブ レーションを対象とした世界的調査の結果では,心タンポナーデが1 . 31%,脳 梗塞が0 . 23%,一過性脳虚血発作(transient ischemic attack;TIA)が 0 . 71%に発生している2)。この傾向はわが国でも同様で,日本不整脈学会(現 日本不整脈心電学会)が実施したAFアブレーションレジストリー(J-CARAF)の 2012年9月および2013年9月の調査結果でも,心タンポナーデがそれぞれ 1 . 4 %,0 . 9 %,有症候性および無症候性脳梗塞がそれぞれ0 . 3 %,0 . 5 %, TIAがそれぞれ0%,0 . 1%に発生していた3)。つまりAFアブレーションは出血 リスクのみでなく塞栓症リスクも伴う治療手技なのである。塞栓症リスクの要因 として,AFによる左房内血栓の形成,アブレーション(焼灼)による血栓形成お よび心内膜傷害(抗血栓性の消失),カテーテル操作(シースおよびアブレーショ ンカテーテル),除細動後の心房筋の気絶状態とこれに続く血栓形成,などが考 えられ4),周術期の適切な抗凝固療法が必要となる。
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