特集 見逃していませんかその症状,疾患!-日常診療で見逃さないためのTips-
2.弁膜症
2.心肺疾患がないにもかかわらず生じた肝硬変の低酸素血症
土井 拓
1
,
馬場 志郎
2
1天理よろづ相談所病院先天性心疾患センター
2京都大学医学部附属病院小児科
キーワード:
肝肺症候群(HPS)
,
肺内シャント・肺動静脈瘻
,
コントラストエコー
,
門脈体循環シャント
,
肝移植
Keyword:
肝肺症候群(HPS)
,
肺内シャント・肺動静脈瘻
,
コントラストエコー
,
門脈体循環シャント
,
肝移植
pp.55-62
発行日 2020年11月1日
Published Date 2020/11/1
DOI https://doi.org/10.18885/HV.0000000359
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患者 6 歳女児。 主訴 低酸素血症。 既往歴 胆道閉鎖症に対し生後20 日に肝門部胆管空腸吻合術施行。3 歳から4 歳にかけ,食道静脈瘤に対し硬化療法を6 回施行。 現病歴 食道静脈瘤硬化療法以降,軽度の肝機能障害を認めるものの,入院することなく元気に過ごしていた。6 歳4 カ月時,発熱と咳嗽を主訴に近医受診。上記症状に加えパルスオキシメーター上SpO2 90%の低酸素血症を認め,気管支炎として入院加療となった。入院後数日で気管支炎は順調に軽快したが,室内気下でSpO2 は91%までしか回復せず,肝疾患を伴う低酸素血症として精査加療のため大学病院へ紹介となった。 入院経過 6 歳6 カ月時,精査目的で入院。心電図に異常なく心エコー図検査で心奇形は否定,コントラストエコーで肺内右左短絡を示唆するバブル像を確認した。肺血流シンチグラフィ施行し,シャント率35.6%の右左シャントが示された。次いで心臓カテーテル検査施行。CVP は2 〜3mmHg,平均肺動脈圧10mmHg,Qp/Qs 0.6,心係数(CI)は6.3 と計測された。カテ中コントラストエコーで肺動脈左右ともgrade 4,造影像含めびまん性肺動静脈瘻と診断確定した。Acute volume challenge test を施行し,肺循環に関し肝移植耐術能ありと判定され,検査終了した。前医で在宅酸素療法導入し生体肝移植待機し,6 歳10 カ月時に母をドナーとして生体肝移植施行。移植1 カ月後には室内気でSpO2 は98%に上昇し,肺血流シンチグラフィにおいてシャント率は8%と正常化したため,酸素投与は終了した。
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