巻頭言
肝硬変症と低酸素血症
滝沢 敬夫
1
1東京女子医科大学内科
pp.115
発行日 1986年2月15日
Published Date 1986/2/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1404204812
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私の恩師,中村隆教授(東北大学)は呼吸器のほかに循環器,とくに副行循環の研究に熱意を燃やしておられた。私自身もその一環として気管支血管系(気管支—肺循環)の研究にたずさわっていたが,当時,肝臓グループが担当していた肝循環に関する研究の一つに,肝硬変症にみる動脈血O2飽和度の低下と関連した門脈—肺吻合に関する研究があった。その折の肝グループの検索結果は,肝硬変症における門脈—肺吻合血流は肝外短絡血流の一部をなすけれども,その量は少なく,これによって肝硬変症にみられる動脈血O2飽和度の低下を説明すすることはできないとするものであった。
最近,たまたま,高度の低酸素血症をともなう肝硬変症の患者を経験し,東北大学時代における副行循環の研究を懐しく想起するとともに,昨今におけるこの方面の研究動向に目を走らせてみた。
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