5．労作時に意識消失・心肺停止した20歳代，女性。心電図には左室肥大所見以外の異常は認めないが，連続性高調性雑音を聴取し，心エコーでは右冠動脈の拡張と前壁中隔内に複数の血流信号を認めた症例

生来健康な20 歳代，女性，通勤中に地下鉄の階段を駆け上がり乗車直後に意識消失，心肺停止状態となった。現場に居合わせた人々（Bystanders）により心肺蘇生が行われ救急隊にて心室細動確認，直流除細動にて洞調律に復帰。大学病院の集中治療室で低体温療法およびバルビツレート療法をされ約3 週間後に神経学的後遺障害を残さず退院した。心室細動精査目的で当院に紹介入院となる。身長155cm，体重53kg，血圧112/56mmHg，脈拍56 回/ 分整。理学所見では胸骨左縁第3 肋間に最強点を有するLevine3/6 の連続性高調性雑音を聴取する以外に特記すべきことなし。前医の心電図では左室肥大所見を認めた。胸部X 線では心胸郭比が52％とやや拡大，心エコー図検査では左室の軽度拡大のみ指摘されていた。転院後の心エコー図検査にて右冠動脈の起始部からのびまん性の拡大と，右冠動脈から中隔枝を逆行して左前下行枝に流れ込む複数の側副血行路を前壁心筋内に認めた。