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特集 整形外科領域におけるAIの応用
Ⅲ章.AIによる動作解析
3.成人脊柱変形における歩行解析
-――三次元動作解析からAIアプローチまで
Gait analysis in adult spinal deformity:from three-dimensional motion analysis to artificial intelligence approach
三浦 紘世
1
,
陳 凱旭
2
,
門根 秀樹
3,4
,
朝田 智之
1
,
家永 直人
5
,
黒田 嘉宏
3,5
K. Miura
1
,
K. Chen
2
,
H. Kadone
3,4
,
T. Asada
1
,
N. Ienaga
5
,
Y. Kuroda
3,5
1筑波大学整形外科
2筑波大学大学院システム情報工学研究群
3筑波大学サイバニクス研究センター
4筑波大学附属病院未来医工融合研究センター
5筑波大学システム情報系
1Dept. of Orthop. Surg., Institute of Medicine, University of Tsukuba, Tsukuba
キーワード:
adult spinal deformity
,
gait analysis
,
deep learning
,
dynamic sagittal balance
Keyword:
adult spinal deformity
,
gait analysis
,
deep learning
,
dynamic sagittal balance
pp.561-564
発行日 2025年5月25日
Published Date 2025/5/25
DOI https://doi.org/10.15106/j_seikei76_561
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は じ め に
近年,本邦における超高齢社会の進行に伴い,成人脊柱変形の診療機会は著しく増加している.本疾患の主要な特徴として,立位保持や歩行時における腰痛やバランス障害の増悪があげられ,これらの症状は患者の日常生活動作に重大な支障をもたらすことが知られている.
従来より,成人脊柱変形の評価においては,立位全脊椎X線像による評価が標準的手法として広く用いられてきた.具体的には,sagittal vertical axis(SVA),胸椎後弯角(TK),腰椎前弯角(LL),骨盤傾斜角(PT)などの脊椎骨盤矢状面パラメータの測定が行われている.しかしながら,これらの静的評価手法には再現性の課題が存在し,立位単純X線検査のみでは本疾患の病態を包括的に把握することは困難であることが指摘されている.特に注目すべき点として,立位X線像における各パラメータは撮影時の姿勢に大きく依存し,特にSVAや骨盤傾斜角については,患者の立位姿勢により著しい変動を示すことが報告されている1).このような従来の評価法がもつ限界を克服するため,われわれの研究グループでは三次元歩行動作解析を用いた動的な脊椎骨盤矢状面バランスの評価に取り組んできた.さらに,近年めざましい発展を遂げているAI技術の歩行動作解析への応用が技術的に可能となっている.
本稿では,われわれが実施してきた成人脊柱変形に対する三次元歩行動作解析の研究成果と,最新のAIを用いた歩行解析手法について概説する.これらの新しい評価法により,従来の静的評価ではとらえることができなかった本疾患の病態解明がすすむことが期待される.

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