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【要 旨】
目 的:成人脊柱変形では全脊椎単純X線を用いた一時的な立位の脊椎骨盤アライメント評価が広く用いられているが,腰痛や姿勢が立位保持や歩行で悪化する症例が多く,病態に動的な要素が強い.本研究の目的は,三次元歩行動作解析を用いて成人脊柱変形患者における歩行中の脊椎骨盤アライメント動的変化を評価することである.
対象および方法:矢状面アライメント異常を有する成人脊柱変形でVICONを用いた三次元歩行動作解析を行った症例を対象とした.歩行中の動的パラメータとして胸椎(C7-Th12),腰椎(Th12-S1),全脊椎(C7-S1)のセグメントにおける矢状面の距離,冠状面の距離,矢状面の角度,冠状面の角度を計測した.骨盤のパラメータとして水平面に対する骨盤の矢状面の角度,冠状面の角度を計測した.また,骨盤傾斜に対する脊椎の傾斜角を矢状面と冠状面で計測した.歩行開始時と歩行終了時の2点を比較した.
結 果:対象は20例であった.連続歩行により矢状面において脊椎と骨盤の前傾が有意に進行した.冠状面では有意な変化はなかった.骨盤傾斜に対する脊椎の矢状面角度の評価では,腰椎では有意な変化がなかったが,胸椎でのみ有意に前傾が進行した.
考 察:成人脊柱変形において胸椎の後弯減少と骨盤後傾は立位単純X線において腰椎前弯減少に対する代償として知られている.本研究の結果より,長距離の連続歩行負荷により胸椎と骨盤の前傾が進行した.これは,歩行負荷により脊柱変形に対する代償の破綻をとらえられたと考えられる.症例個々の代償の能力の違いを三次元歩行解析による動的な脊椎骨盤パラメータ計測でとらえることは,病態のさらなる理解に有効と考えられる.
結 論:従来の全脊椎単純X線を用いた立位の静的なアライメント計測に加えて三次元歩行動作解析を加えることは,個々の症例の病態の差異をとらえることに有用となる可能性がある.
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