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はじめに
成人脊柱変形患者では,脊柱および骨盤に生じた変性や椎体骨折に体幹筋や下肢筋の筋力低下,神経障害要素が複雑に関与し,脊椎や骨盤の矢状面・冠状面でのアライメント不良を生じる.その結果,腰痛,心理障害,美容障害,内臓障害,下肢痛,歩行障害など多岐にわたる症状を呈し,特に矢状面での脊柱・骨盤アライメント不良は健康関連QOLに影響を及ぼす8).これらの愁訴の中でも「歩行」は生活の基本であり,成人脊柱変形患者でどのように障害されているかを把握することは治療方針を考えるうえで重要である2,10).成人脊柱変形に対する客観評価は主にX線を用いた立位全脊椎・下肢アライメント評価であるが,X線による立位の評価と実際の歩行姿勢が乖離する例も存在する2).そのため,実際の歩行姿勢を考慮して治療方針を立てることが重要である.また,治療効果を判定するうえでも実際の歩行がどう変化するかを理解することが重要である4,5,7,11).歩行時の動作解析を行ううえでは,工学分野が有しているテクノロジーの活用が有用である.われわれは成人脊柱変形患者の歩行を評価するために,二次元画像にモーションキャプチャーソフトウェアを用いて行う簡易的な歩行解析やKinect(Microsoft, Redmond, USA)を搭載したマーカーレス歩行解析装置を用いた三次元歩行解析を行ってきた.また,成人脊柱変形患者では立位・歩行時の体幹のアライメント不良に対し脊椎・骨盤・下肢にさまざまな代償機構が働いており,これらの代償には筋肉が重要な部分を担っている.筋活動の評価には人間工学分野のテクノロジーである表面筋電図を用いて計測・観察することが有用である.われわれは立位保持における体幹・下肢筋の筋活動を,表面筋電図を用いて評価してきた.本稿では,これらの研究を通じて得た知見,今後の取り組みに関して報告する.
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