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【要 旨】
目 的:頚椎椎弓形成術は頚髄症に対する多椎間同時除圧法として有効な術式である.手術成績向上のため,現在も手術手技の改良が行われている.一方で,手術を受ける患者は年々高齢化している.そのような手術手技の変遷や患者背景の変化は術後合併症の発生に影響を与える可能性はあるが,十分に検討されていない.本研究では,頚椎椎弓形成術の手術手技の変遷と術後合併症の発生について,最近10年間のトレンドを調査した.
対象および方法:北関東脊椎グループの多機関共同研究に登録され,2008~2017年に頚椎椎弓形成術を受けた頚椎症性脊髄症(CSM)・頚椎後縦靱帯骨化症(OPLL)の患者1,095例を対象とした.手術時期に応じて前期群(2008~2012年)と後期群(2013~2017年)の2群に分け,患者背景,疾患割合(CSM/OPLL),術式(片開き/両開き),手術情報(C2・C7棘突起に付着する後方支持組織の温存率,形成椎弓数,手術時間,出血量),治療成績[日本整形外科学会頚髄症治療成績判定基準(JOAスコア)]を調査した.Primary outcomeは術後30日以内のすべての合併症の発生とし,サブ解析ではその内訳を検討した.
結 果:前期群は542例,後期群は553例であった.疾患割合(%CSM 77% vs. 78%),body mass index(BMI)[24.4kg/m2 vs. 23.4kg/m2],JOAスコア(術前10.4 vs. 10.1,最終経過観察時13.3 vs. 13.0)は2群間で有意差はなかった.後期群では,手術時年齢が高く(65.0歳vs. 67.6歳),男性患者の割合が高く(66% vs. 73%),片開き法の割合(50% vs. 69%)とC7後方支持組織の温存率(62% vs. 85%)が有意に高かった.また,形成椎弓数(3.7椎弓vs. 3.1椎弓),手術時間(2.6時間vs. 2.3時間),出血量(118ml vs. 82ml)は有意に減少した.術後30日合併症の発生率は,前・後期群で同程度であった(3.9% vs. 3.4%).その内訳に関して,後期群ではC5麻痺は減少傾向であったが(2.4% vs. 0.9%,p=0.059),感染症関連の合併症(手術部位感染,尿路感染,誤嚥性肺炎)は有意に増加した(0.6% vs. 1.8%,p=0.017).
結 論:頚椎椎弓形成術の最近10年間のトレンドとして,患者は高齢化し,片開き法が増え,C7棘突起に付着する後方支持組織の温存といった手術手技の改良・発展があった.術後30日合併症の発生率に増減はなかったが,その内訳は変化し,最近5年間ではC5麻痺は1/2に減少した一方で,感染症関連の合併症は3倍に増加した.
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