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は じ め に
頚椎椎弓形成術(cervical laminoplasty:CLP)は,頚椎症性脊髄症(cervical spondylotic myelopathy:CSM),頚椎後縦靱帯骨化症(ossification of posterior longitudinal ligament:OPLL)などの圧迫性頚髄症に対する本邦でもっとも一般的な手術療法である.固定を併用する術式と比較して,CLPは除圧部位の可動性を保持する利点があり,この特性により隣接する部位への障害リスクを抑え,長期的に優れた臨床成績を可能としている1).
一方,可動性が温存できるという特性は,頚椎前弯の喪失とそれに続く後弯変形のリスクが潜在する.CLP後の後弯変形は,頚部痛の増悪や健康関連の生活の質(health-related quality of life:HrQOL)の低下を引き起こすだけでなく,脊髄の除圧効果を損なうことで神経機能の回復にも悪影響を及ぼす.さらに,後弯変形がすすむと首下がり症にいたる例もあり,これに対する治療はきわめて困難である.CLP後に発生する後弯変形は不可逆的であり,良好な術後成績を得るためにはこの合併症の回避が不可欠であるといえる.
術後後弯変形を予防するためには,その危険因子を考慮した適切な患者選択・手術適応がもっとも重要である.2010年以降,脊椎矢状面アライメントの理解が深まるにつれて,T1 slopeやcervical sagittal vertical axis(cSVA)などの矢状面パラメータがCLP後の後弯変形の危険因子として注目されるようになった2,3).しかし近年では,頚椎X線機能撮影から算出される可動域(range of motion:ROM)が,CLP後の前弯喪失をより鋭敏に予測できるとの報告がなされている.
われわれは,術前X線像上での屈曲可動域(flexion ROM:fROM)と伸展可動域(extension ROM:eROM)の相対的指標であるGap ROMを用いて術後後弯変形の予測を行い,CLPの手術適応を決定している4).本稿では,CSMに対するCLP後の後弯変形の概要,gap ROMを用いた後弯変形の予測の実際,および周術期における予防策について詳述する.

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