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特集 変形性関節症の診断と治療――保存的治療から再生医療まで
Ⅰ章.変形性関節症に関する基礎研究
5.変形性関節症のバイオマーカー
Biological markers in osteoarthritis
森田 充浩
1
,
伊達 秀樹
1
,
黒岩 宇
1
,
大塚 明世
1
,
藤田 順之
1
M. Morita
1
,
H. Date
1
,
T. Kuroiwa
1
,
A. Otsuka
1
,
N. Fujita
1
1藤田医科大学整形外科
1Dept. of Orthop. Surg., Fujita Health University, School of Medicine, Toyoake
キーワード:
biological marker
,
OA
,
cartilage oligometric matrix protein
Keyword:
biological marker
,
OA
,
cartilage oligometric matrix protein
pp.522-525
発行日 2023年5月25日
Published Date 2023/5/25
DOI https://doi.org/10.15106/j_seikei74_522
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は じ め に
変形性関節症(OA)は荷重負荷による経時的ストレスや外傷,肥満,加齢,遺伝的素因などをはじめとする多因子要素が関与して発症する関節疾患である.中でも歩行において荷重による負荷を強く受ける膝関節は,ひとたび炎症性変化を生じると腫脹や疼痛を生じやすく,歩行能力の低下による日常生活動作(ADL)の著しい悪化をきたす.このADLの低下が誘因となって血液循環代謝機能の低下や肥満といったメタボリック症候群の進行を招くほか,日常生活機能や生体維持機能を著しく低下させ,高齢者においては寝たきり状態に陥るなど,要介護人口を増加させる根本的原因となっていることが社会的・医療経済的問題となっていることを近年の医療統計が明らかにしている1).日本整形外科学会では,変形性脊椎症と併せてロコモティブ症候群と称して早期受診と治療対策に臨むよう啓発活動を行っている2).OAは初期の段階から関節軟骨の障害をきたすのが特徴であるが,既存の画像検査ではその初期変化をリアルタイムに把握することは困難であり,検査の簡便性の面からみても関節構成体である軟骨や骨,滑膜の代謝状況を血液,尿,関節液などの体液を用いて直接計測し,早期に異常を感知することが適切であると考えられる.それにはこれら関節構成体からの代謝産物をとらえて検査することが必須である.測定の対象となる体液中の標的分子を関節のバイオマーカーと称するが,本稿ではOAのバイオマーカーについて知見をふまえて紹介する.
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