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特集 変形性関節症の診断と治療――保存的治療から再生医療まで
Ⅰ章.変形性関節症に関する基礎研究
4.変形性関節症の分子機構
Molecular mechanisms in osteoarthritis
味八木 茂
1
S. Miyaki
1
1広島大学病院未来医療センター
1Future Medical Center, Hiroshima University Hospital, Hiroshima
キーワード:
transcriptional factor
,
micro RNA
,
cartilage degeneration
Keyword:
transcriptional factor
,
micro RNA
,
cartilage degeneration
pp.516-521
発行日 2023年5月25日
Published Date 2023/5/25
DOI https://doi.org/10.15106/j_seikei74_516
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は じ め に
変形性関節症(OA)の発生率と有病率は世界的に増加しているが1),現在まで鎮痛を主とした対症療法のみであり,関節の構造的損傷やそれに伴う痛みの両方を管理でき,進行を抑制できるOA治療薬はいまだ存在しない.OAの分子病態機構に関するさらなる理解は,適切な薬理学的標的を同定するためにも不可欠である.すべてのゲノム配列が解読された今,生体内における分子の局在やその経時的変化を把握することは,次なるポストゲノム研究の重要な課題である個々の分子機能の解明において,多くの重要な情報をもたらしてきた.そして,CRISPR/Casシステムなどによるゲノム編集技術の発展や次世代シーケンサーを用いたリボ核酸(RNA)シーケンス(RNA-seq),クロマチン免疫沈降シーケンス(ChIP-seq),シングルセルRNAシーケンス(scRNA-seq)などによる網羅的解析などにより,この10年ほどで転写因子を起点とした軟骨細胞におけるエピジェネティクスを含む遺伝子発現機構の詳細が明らかになりつつある.遺伝情報の流れを表すセントラルドグマは,DNA→(転写)→RNA→(翻訳)→蛋白質という基本的な分子生物学の概念である.本稿ではゲノムデオキシリボ核酸(DNA)解析により,OAが遺伝要因と環境要因の総合的な作用により発症する多因子遺伝病であることを概説する.また,(転写)→RNA→(翻訳)→蛋白質のプロセスにおける転写スイッチである転写因子と転写後制御因子であるmicro RNA(miRNA)に焦点をあて,主に遺伝子改変マウスにより明らかにされたOA発症の分子機構についても概説する.
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