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は じ め に
変形性関節症(OA)は関節に非炎症性,進行性に骨形成性の変化をきたし,疼痛によって日常生活に不都合をきたす疾患である.近年の厚生労働省国民生活基礎調査の結果をみると,OAを含む関節症は高齢者が要支援・要介護になる原因の5位,要支援のみでみると1位で推移しており1),OAが多くの高齢者の健康寿命を短縮し,さらに医療費の高騰,労働力の低下の一因となっていることは明らかである.したがって,高齢者の生活の質(QOL)を維持向上させるためには,OAの予防や悪化防止は喫緊の課題である.
一般にある疾患を予防するためには,まずどのくらいの割合で対象者がいるのか(有病率),それらに影響を及ぼす要因は何かを明らかにする必要がある.さらに追跡調査が可能となれば,どのくらいの患者が新たに発生するのか(発生率),発生に影響する要因は何かを明らかにすることができる.しかしながら,OAをはじめとする運動器疾患は,高齢者に多く,慢性に進行し,経過が長いという特徴がある.すなわち経過期間中は,症状がほとんどない状態が長いため,医療機関に受診しないことが多い.そのため,これらの疾患の早期の段階における医療機関での発見はむずかしく,予防に必要な疫学指標を推定するためには一般住民の集団を設定して,集団全体について検診を行う必要がある.このような事情のために,患者数がきわめて多いと考えられるにもかかわらず,OAを目的疾患とした疫学研究の報告は十分とはいえない.
筆者らは,高齢者のQOLの維持・向上と要介護予防のために,主として運動器疾患の基本的疫学指標を明らかにし,その危険因子を同定することを目的として,2005年より大規模住民コホートResearch on Osteoarthritis/osteoporosis Against Disability(ROAD)プロジェクトを開始した2,3).本稿では,ROADにおける一般住民検診の結果報告から,膝,腰,股関節,手のOAについて,まずはOAの有病率について述べ,それらの合併と長期トレンドについて報告する.
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