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【要 旨】
目 的:ヒトは生理的にそれぞれ異なる速度で年齢を重ねるため,高齢になるほど生理的年齢と実年齢との間に乖離が生じることが報告されている.そのため,成人脊柱変形(adult spinal deformity:ASD)手術の適応判断において,実年齢よりも生理的年齢を重視する必要があると考える.しかし,後期高齢者は一般的に併存疾患が多く,予備能力も低下しているとされ,実年齢を理由に手術適応から除外されることがある.本研究の目的は,生理的年齢の判断基準の一つであるフレイルの概念に着目し,ASD手術の適応判断における生理的年齢(フレイル)の重要性を明らかにすることである.
対象および方法:2015~2019年に下位胸椎から骨盤までのASD手術を受けた65歳以上の109例を対象とした.患者を実年齢により2群に分類し[Y群(65~74歳),O群(75歳以上)],さらにASD-frailty indexスコアによる分類(F群:フレイル,NF群:非フレイル)を加味して4群に分類した(Y-F群,Y-NF群,O-F群,O-NF群).術後経過,合併症発生率,手術成績に対する潜在的交絡因子を考慮し,性別,肥満度(body mass index:BMI),術前の脊椎矢状面アライメント[C7-sagittal vertical axis(SVA),pelvic incidence(PI)-lumbar lordosis(LL),骨盤傾斜(pelvic tilt:PT)]に基づく傾向スコアマッチングを行った.臨床成績は術後2年時の患者立脚型評価法[Oswestry disability index(ODI),Scoliosis Research Society(SRS)-22,short form(SF)-36]を用いて評価した.また,術後の初回歩行までの日数,合併症発生率も評価した.
結 果:O群ではマイナー合併症(せん妄,尿路感染)のリスクが高かったが,SRS-22(satisfaction)はY群よりも有意に良好であった.また,O-NF群はY-F群に比べ,初回歩行までの日数,SRS-22(function,self-image,satisfaction),SF-36(physical component summary scale:PCS)の成績が良好であった.
結 論:後期高齢ASD患者の術後管理では,特にマイナー合併症(せん妄,尿路感染)の観察が重要であった.しかし,フレイルではない後期高齢ASD患者(O-NF群)の手術成績は,前期高齢ASD患者と比較しても同等,あるいは高い満足度が得られる点などではより優れていた.以上より,高齢ASD患者の手術適応を決定する際には,生理的年齢を考慮することが重要であると考える.
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