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はじめに:仙腸関節痛(SIJP)は,成人脊柱変形(ASD)手術後に発生する隣接椎間障害の病態の1つである.本研究では,S2 alar-iliac(S2AI)スクリューを用いたASD手術においても,SIJPが従来よりも早期に発症し得ること,そして超音波ガイド下仙腸関節ブロックによって疼痛緩和が可能であるという仮説の検証を目的とした.方法:S2AIスクリューを用いた長範囲脊椎固定術を受けたASD患者94例を対象に,術後のSIJP発症状況と超音波ガイド下仙腸関節ブロックの効果について前向きに検討した.また,SIJPの症状側と手術手技との関連性,術前および術後の全脊柱矢状面・前額面アライメント,腰椎骨盤矢状面アライメント,ならびに骨盤傾斜-腰椎前弯(PI-LL)について,SIJPの有無による群間比較を後ろ向きに行った.結果:94例中11例(11.7%)にSIJPが認められた.平均発症時期は術後12.0日(±6.2)であった.「ワンフィンガーテスト」「Gaenslenテスト」「PSIS部圧痛」は高い陽性率を示し,SIJPの診断に有用であった.夜間痛は81.8%の症例に認められ,診断的特徴の1つと考えられた.SIJPの症状側とLIFのアプローチ側,腸骨移植部位,S2AIスクリューの位置異常との間には有意な関連性は認められなかった.また,術前・術後・術後の変化量を含めた背景因子および画像所見においても,SIJP陽性群と陰性群の間に有意差はなかった.11例中2例では4回の仙腸関節ブロックが必要であったが,最終的には全例で70%以上の疼痛軽減が得られ,再発は認められなかった.結論:脊椎固定術後早期の殿部・鼡径部痛のうち,約12%がSIJPによるものであり,超音波ガイド下仙腸関節ブロックによって疼痛が軽減可能であるという知見は,術後疼痛管理および理学療法の推進において,診断および治療上極めて重要な臨床情報である.

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