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連載 革新的技術がもたらす小児運動器難病の新展開――基礎から臨床へ
Perthes病と大腿骨頭すべり症における最近の臨床的進展
Recent clinical progresses in Legg-Calvé-Perthes disease and slipped capital femoral epiphysis
山口 亮介
1
R. Yamaguchi
1
1九州大学整形外科
1Dept. of Orthop. Surg., Kyusyu University, Fukuoka
キーワード:
pediatric hip disease
,
Legg-Calvé-Perthes disease
,
slipped capital femoral epiphysis
Keyword:
pediatric hip disease
,
Legg-Calvé-Perthes disease
,
slipped capital femoral epiphysis
pp.985-988
発行日 2021年8月1日
Published Date 2021/8/1
DOI https://doi.org/10.15106/j_seikei72_985
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は じ め に
小児股関節疾患は自覚症状に乏しく,跛行などの他覚的所見で気づかれることが多い.治療の目的は成人股関節疾患とは異なり,除痛ではなく,将来的な股関節変形を残さないことである.股関節変形が遺残した場合,成人期以降に徐々に変性が進行し,股関節痛による日常生活制限が生じる(図1).つまり小児期の治療は,股関節変形が生じるか,それによりどのような症状が生じるか,結果判定までに数十年を要する場合があり,本領域では日進月歩での臨床的進展が得られにくい.したがって先人たちが行ってきた治療を,後の世代が適切なタイミングで評価することが必須で,その治療法の有効性だけではなく,適応の限界についても正確に報告することに価値がある.なんらかの新規治療法が提案された場合も,疾患そのものに加えて患児の成長余地への影響も考慮する必要があり,さらに最終的手段としての人工股関節全置換術が小児では適応とならないことから,新規治療法の実践には倫理的な制限が大きい.そこで近年では,病態の解明や早期治療効果判定に有効な動物モデルの開発や分子生物学的手法の利用が,特にPerthes病において進歩している状況である.
本稿では,小児の代表的な股関節疾患であるPerthes病および大腿骨頭すべり症における近年の臨床的進展を概説する.
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