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コンドリアーゼ(コンドロイチナーゼABC)は,グラム陰性桿菌のProteus vulgarisから分離されたムコ多糖分解酵素で1),椎間板の髄核に豊富に存在し,保水機能をもつプロテオグリカンのグリコサミノグリカン(GAG)を構成するコンドロイチン硫酸およびヒアルロン酸に対して高い基質特異性を有し分解作用を示す.本邦において,2018年8月より腰椎椎間板ヘルニアに対するコンドリアーゼを用いた化学的髄核融解術が保険収載となった.コンドリアーゼを用いた化学的髄核融解術は,外科的にヘルニアを摘出する直接的な徐圧効果と異なり,間接的徐圧による方法で,そのコンセプトは1964年にSmithらにより報告されたキモパパインを用いた化学髄核融解術2)に始まり,薬剤により椎間板内圧を減少させ神経根の圧迫を減少させることである.キモパパインは,基質特異性が低く,椎間板内プロテオグリカンのGAGのみならず,コラーゲンなど,他の椎間板基質に加え,軟骨終板や神経組織にも分解能を有すること,またヒト由来の酵素でないことから全身性あるいは局所性の過敏性アレルギー反応を引き起こしうるという短所があり,現在は使用されていない.コンドリアーゼは,キモパパインと異なり蛋白質分解活性がないために安全性が向上し,神経障害や重篤なアレルギーが減少した3).コンドリアーゼは椎間板内圧減少による間接的除圧であるため,ヘルニアが椎間板から脱出分離しているヘルニアには効果がない.そのため,後縦靱帯下型のヘルニアで非連続型ヘルニアや骨棘による圧迫には適応がない.第Ⅲ相臨床試験では,後縦靱帯下型のヘルニアに対してコンドリアーゼの有効性は13週で72%,52週で79.3%の改善があった4).MRI所見では,投与後3ヵ月で62%ヘルニアの縮小を認めている5).当院における3ヵ月の検討でも,下肢痛visual analogue scale(VAS)改善量≧20の症例を有効と定義すると約75%が有効であり,無効例に比べて有効例ではヘルニア脱出面積の有意な減少を認めた(図1).
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