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慢性腰痛とは,発症から3ヵ月以上持続する第12肋骨と殿溝下端の間にある痛みと定義される1,2).その病態には心理社会的要因が関与している3)とされ,慢性腰痛例では,その評価尺度として,Pain Disability Assessment Scale(PDAS)4)[疼痛生活障害],Hospital Anxiety and Depression Scale(HADS)5)[不安(anxiety:A)・抑うつ(depression:D)],Pain Catastrophizing Scale(PCS)6)[疼痛破局的思考],Pain Self-efficacy Questionnaire(PSEQ)7)[自己効力感]がよく用いられている(表1).一方で,的確な診断と治療がなされない結果として慢性的に腰痛が持続し,それによって心理社会的要因が症状を修飾している場合も考えられる.
仙腸関節は仙骨と腸骨の関節面から構成される滑膜関節であり,わずかな可動域で大きな負荷に対応しているため,不意の外力や繰り返しの衝撃で関節に不適合が生じ,関節の機能障害(仙腸関節障害)を起こしやすい8).仙腸関節障害は,one finger test9)で上後腸骨棘(PSIS)をさす腰殿部痛が多く,時に鼡径部痛を伴い,椅子坐位時に増悪,仙腸関節shear test10)の陽性率が高く,PSISと仙結節靱帯に圧痛を認めるなどの特徴的な臨床所見を有すことから疑うことは比較的容易であり,最終的に仙腸関節ブロック注射の効果で確定診断する9,11).しかし,仙腸関節の微小な不適合は画像検査でとらえられないことから,非特異的腰痛と判断され,慢性の経過をたどることがある.
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