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は じ め に
仙腸関節は仙骨と腸骨の関節面で構成される滑膜関節である.密な周囲靱帯に制限されたわずかな関節運動を有することで,脊柱の根元で衝撃緩和装置に似た役割を担っていると考えられる.仙腸関節はわずかな可動域で大きな負荷に対応しているため,不意の外力や繰り返しの衝撃で関節に不適合が生じて,関節の機能障害(仙腸関節障害)を起こしやすい.仙腸関節に微小な不適合を生じると,後方靱帯が過緊張となり,靱帯内にある知覚神経終末や侵害受容器が刺激されて,痛みが生じるものと考えられる1).
仙腸関節障害では,仙腸関節ブロックや徒手療法により関節の不適合が解除されて症状が軽快していく例が多い.しかし,中には仙腸関節周囲の靱帯である長後仙腸靱帯(long posterior sacroiliac ligament:LPSL)や,仙結節靱帯(sacrotuberous ligament:STL)の坐骨結節付着部などに疼痛が残存し,治療に難渋することがある2).
運動器疾患に対する物理療法の一つとして,体外衝撃波治療(extracorporeal shockwave therapy:ESWT)が,わが国では2012年より難治性の足底腱膜炎に対して保険適用となっている3).一方,欧米では,除痛効果や腱修復をうながす物理療法として,足底腱膜炎のみならず,アキレス腱症,ジャンパー膝,上腕骨外側上顆炎など,他部位の難治性腱付着部症に対しても応用され,広く普及している3).これらの効果から,仙腸関節周辺の靱帯付着部由来の疼痛に対してもESWTの治療効果が期待できるが,これまで施行された研究はない.われわれは,仙腸関節周囲の靱帯付着部由来の痛みに対してESWTを実施し,その有効性を検証した.
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