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は じ め に
医療の進歩によって,わが国の平均寿命は延び,長寿社会と呼ばれるようになり,健康寿命の延伸が注目されるようになってきた.このような背景から,高齢者の健康維持に焦点をあてた取り組みが強化され,「二十一世紀における第二次国民健康づくり運動[健康日本21(第二次)]」では,「社会生活を営むために必要な機能の維持及び向上」に掲げられた具体的な目標の一つとして,ロコモティブシンドロームの予防が盛り込まれている1).
ロコモティブシンドロームは,「運動器の障害のために移動能力の低下をきたし,要介護の状態や要介護リスクの高い状態」を表す言葉として,日本整形外科学会が提唱した言葉であり2),健康寿命延伸の観点において,整形外科領域が注力し取り組むべき課題の一つである.
ロコモティブシンドロームの主要な原因に変形性関節症(OA)がある.OAは関節疾患のなかでもっとも高頻度にみられる疾患であるが,その有病率は加齢に伴い増加するため3),OAの患者数は高齢者数の増加に伴って増加が続くと推定される.OAの痛みや炎症を適切に治療し,慢性化や進展を防ぐことができれば,健康寿命を延伸させるだけでなく,医療費,介護保険料の高騰を抑制することへの寄与も期待される.
OAの治療法には病期に応じてさまざまなものがあり,薬物療法の中心は非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)である.NSAIDsのなかでも,経口NSAIDsが多く用いられているが,2019年のOsteoarthritis Research Society International(OARSI)ガイドライン4)において,変形性膝関節症に対して局所NSAIDsがレベル1 Aの推奨度(75%以上が賛成および50%超が強い推奨)となった.局所NSAIDsである外用NSAIDsは,経口NSAIDsに多く発現する消化管障害を回避することができるが,経皮吸収率が低いことや標的部位である深部組織への移行性が不十分であることが指摘されてきた5).また,既存の外用NSAIDsにおける経口NSAIDsの併用割合は40%を超えており6),ポリファーマシーの観点からも経口NSAIDsを併用しないことにより消化管障害を回避し,かつ疼痛緩和効果に優れた外用NSAIDsが望まれている.
エスフルルビプロフェン貼付剤は,経皮吸収性を高め,より標的組織への移行性を高めることを目的に,大正製薬社(東京)およびトクホン社(東京)の共同開発により創製された外用NSAIDsである7).わが国におけるOA患者を対象とした国内第Ⅲ相試験8,9)において,本剤の安全性および有効性が確認されたことから,2015年9月に「変形性関節症における鎮痛・消炎」の効能・効果で製造販売承認を取得した.しかしながら,承認申請時の臨床試験データでは投与期間および症例数が限られているため,本剤の安全性および有効性を十分に評価することができなかった.そこで本研究では,エスフルルビプロフェン貼付剤の特定使用成績調査を実施し,日常診療の使用実態下における本剤の安全性および有効性を明らかにすることを目的とした.
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