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は じ め に
肘関節は,ヒトが社会生活,労働,スポーツ活動をするうえで,体を支え,運動エネルギーを与え,衝撃を吸収し,制御するため常に酷使され,日常生活で体重の0.3~0.5倍1),重労働で3倍2)の負荷がかかる関節である.変形性肘関節症は,有病率が2%で男性と重労働者に有意に発症し3),ほかの関節に比べて関節裂隙は比較的保たれ,遊離体を時に伴う骨棘形成と関節包拘縮が特徴であると報告されている4).
このため症状は,遊離体,骨棘や関節包拘縮による痛み,運動制限,時に尺骨神経障害を合併したしびれを認める.単純X線像では約30%の遊離体や骨棘・遊離体をみつけることができないため5),単純CTで,遊離体の有無とその部位と数,骨棘の位置と程度を正確に把握する必要がある.保存的治療の効果は限定的で,有効な関節内注射療法は,原因解決にはいたらず再発の可能性が高く,ステロイドの頻回使用は副作用が危惧され,アスリートにはアンチ・ドーピングの観点からより厳格な適応が必要となる.手術的治療は,関節形成術,関節内挿入術や人工関節置換術などがあるが,前述の特徴から関節内関節形成術が有効である.Tsugeら6)やWadaら7)は,低侵襲で効果的な観血的関節形成術を考案し,その良好な治療成績を報告した.その後,他関節に遅れて肘関節へ関節鏡手術が応用され,安全かつ効果的な関節鏡視下手術が構築された8).しかし,骨棘形成は,その関節が必要とされる機能への適応,防御反応,必要な変化であり,切除の必要性や範囲はあくまでも個々の症例の背景を考慮する必要がある.本稿では,変形性肘関節症に対する鏡視下形成術の適応と方法を紹介し,当科における治療成績をふまえ文献的考察をし,今後の展望を述べる.
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