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首下がり症候群
三浦 紘世
1
1筑波大学整形外科
pp.1196-1196
発行日 2020年10月1日
Published Date 2020/10/1
DOI https://doi.org/10.15106/j_seikei71_1196
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首下がり症候群(dropped head syndrome:DHS)とは頚部が過度に前屈して,首が垂れ下がった姿勢におちいる一連の症候群である.症状は,軽症では頚部痛や,頭部が下垂するために前方注視障害が生じる.下顎が胸部に接するchin-on-chest deformityにいたるほどの重症では,嚥下障害や開口障害,歩行障害,前胸部の皮膚びらんをきたし,生活の質(QOL)が強く障害される.また,脊柱管狭窄による脊髄障害を合併する症例もある.狭義の首下がり症候群は頚部伸筋の筋力低下を主な原因とする他動的に矯正可能な柔らかい変形が特徴であり,強直性脊椎炎などの脊椎関節炎で起こる硬い頚椎後弯変形とは異なる病態である.疾患の起源としては,Gerlier1)が1887年にはじめてGerlier病として首下がりを報告し,本邦では中野2)が1888年に,Miura3)が1897年に同様の病態を報告している.当時は,感染性の風土病の一種という推定がなされていた.1980年ごろより,さまざまな疾患に合併した頚椎後弯の報告がなされ,Suarezら4)が1992年に症候群としてまとめ “dropped head syndrome” と名づけた.
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