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特集 首下がり症候群の病態と治療
パーキンソン病による首下がり症候群
Dropped Head Syndrome in Parkinson's Disease
藤本 健一
1
Ken-ichi FUJIMOTO
1
1自治医大ステーション・ブレインクリニック
1Jichiidai Station Brain Clinic
キーワード:
ジストニア(dystonia)
,
多系統萎縮症(multiple system atrophy)
,
限局性筋炎(isolated myopathy)
Keyword:
ジストニア(dystonia)
,
多系統萎縮症(multiple system atrophy)
,
限局性筋炎(isolated myopathy)
pp.943-949
発行日 2015年11月25日
Published Date 2015/11/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.5002200241
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はじめに
パーキンソン病は1817年に,ロンドンの内科医James Parkinsonによって記載された18).神経変性疾患の中ではアルツハイマー病に次いで頻度が多い.中高年に好発し,運動症状のほかに精神症状,自律神経症状,嗅覚障害,痛み,疲労など多彩な症状を呈する.有病率は人口10万人あたり120〜150人とされ,高齢者の増加と治療法の進歩により長期生存例が増えたことから,有病率は年々増加している.さまざまな細胞内メカニズムの破綻によって,αシヌクレインと呼ばれる異常タンパクができることが原因と考えられている.αシヌクレインの凝集塊であるレビー小体が中脳黒質のドパミン細胞に蓄積して細胞が変性脱落する結果,投射先である線条体でドパミンが不足する.線条体のドパミンは20歳頃がピークで,健常人でも加齢に伴い徐々に減少する.ドパミンがピーク時の約20%まで減少するとパーキンソン症状が発現する.健常人でも100歳を超えるとドパミンが20%を割るので,100歳を超えた高齢者の動きは遅くてぎこちない.パーキンソン病では50〜60歳代でドパミンが20%を割る.1960年代後半に薬によってドパミンを補うことができるようになり,パーキンソン病の治療は著しい進歩を遂げた.その後の新薬の開発や脳深部刺激など手術療法の導入によって,治療法のない時代は発症後5年で寝たきりになっていたのが,現在ではほぼ天寿を全うできるまで生命予後が改善した.しかし,日常生活に不便をもたらす症状も多く,快適な日常生活を送れないことも多い.本特集で取り上げる首下がりも,生活に不便をもたらす症状の1つである.
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