首下がり症候群の病態と分類

The Pathophysiology and Classification of Dropped Head Syndrome

はじめに

　首下がり症候群（dropped head syndrome：DHS）は，頸部伸筋群の著明な筋力低下が原因でchin-on-chest deformityを呈する一連の症候群で，多岐にわたる疾患背景を有する^4）．DHSの後弯変形は，典型的にはflexible spineで他動的に矯正可能であることが特徴であり，同じく著明な頸椎後弯を呈する強直性脊椎炎や脊椎外傷後のようなrigid spineとは病態が異なる^10）．中でも特発性DHSは，頸椎後弯症のうち，原因不明の頸部伸展筋力の低下により，頸部の持続伸展が障害される特殊なfunctional kyphosisである^2）．特発性DHSは高齢者に多いことから，発症報告は平均寿命の伸延が著しい先進国に多く，今後の高齢化と疾病認知の拡大により，さらに増加する可能性がある．本稿では，DHS患者の病態と脊椎矢状面形態による分類について，特発性DHS患者35例を中心とした自験例を含めて述べる．