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は じ め に
相撲では,低い体勢からのぶつかり合いによる突きや押しといった競技形態に対応するため,四股や腰割りという相撲特有の動作が基本トレーニングとして行われる.栖原ら1)は,腰割り動作とスクワットを筋電図測定によって比較し,腰割り動作の特徴を探った.腰割りは,スクワットに比して脊柱起立筋の活動量は低値を示し,大殿筋の活動量は高値を示した.つまり,腰割りは腰痛がある状態でも殿筋を鍛えることができる.
また,清水ら2)の研究では,腰割り姿勢で腰椎の伸展,屈曲,回旋を行う体操を11人の腰痛を自覚するリハビリテーション職員に3ヵ月間行わせたところ,腰痛に関するvisual analogue scale(VAS)の平均値が有意に改善した.その理由として彼らは,腰割り姿勢での体操によって,多裂筋の収縮と伸張が反復されることで多裂筋の機能が向上し,さらに体幹の安定性の向上や,椎間関節におけるインピンジメントが予防されたためであると述べている.
過去の研究4)では,腰痛症患者に骨盤周囲筋のストレッチを2週間行う前後でのRoland-Morris指数3)の変化量と腰部多裂筋筋硬度の変化量は有意な正の相関を示した.筋硬度の計測は腰痛症の治療成果を客観的に評価するための指標となると考察した4).
本研究では,腰痛の疼痛緩和の目的で腰部トリガー注射を受ける非特異的腰痛患者に腰椎の可動域(ROM)改善を目的とした腰割り姿勢での腰椎回旋運動(肩入れ腰割り運動:以下,腰割り)を併用した群とトリガーポイント注射単独群に分け,二群間でRoland-Morris指数の変化量と腰部多裂筋筋硬度の変化量を比較して,腰痛治療における腰割りの有用性を評価した.
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