Japanese
English
経験と考察
慢性非特異的腰痛症に対する保存的治療による自覚的改善度と多裂筋の筋硬度変化との相関性
The correlation between change of muscle hardness of multifidus muscle and degree of subjective improvement by conservative treatment for chronic non-specific low back pain
戸田 佳孝
1
Y. Toda
1
1戸田整形外科リウマチ科クリニック
1Toda Orthopedic Rheumatology Clinic, Suita
キーワード:
low back pain
,
muscle hardness
,
improvement
Keyword:
low back pain
,
muscle hardness
,
improvement
pp.707-710
発行日 2018年6月1日
Published Date 2018/6/1
DOI https://doi.org/10.15106/j_seikei69_707
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は じ め に
腰痛はもっとも罹患人口の多い疾患の一つであり,全人口の80%が生涯に一度は腰痛を経験するとの報告がある1).
坐骨神経症状や高度の脊椎変形を伴う腰痛患者は,しばしば外科的治療の対象となる.一方,整形外科無床診療所を訪れる腰痛患者の多くは,坐骨神経症状や単純X線像での病変を伴わない非特異的腰痛症であり,保存的治療の対象となる.しかし,検査機材も検査時間も不十分な整形外科無床診療所では非特異的腰痛症の保存的治療の効果を多覚的かつ定量的に評価するのは困難である.
生方ら2)は,ばねの弾性を用いた簡易な筋硬度計を用いて慢性腰痛患者の第5腰椎棘突起レベルの多裂筋の筋硬度を測定したところ,非疼痛側に比べ疼痛側の筋硬度は有意に高値であると報告した.矢吹ら3)は,腰部脊柱起立筋の筋硬度を指標として間欠牽引の効果を腹臥位で検討した.その結果,施行前の値に比して,15分間の間欠牽引後は腹臥位での筋硬度が有意に減少していた.坂口ら4)は15例の腰痛患者に徒手的ストレッチを行うことによって,腸骨稜の高さ(Jacoby線)の傍脊柱筋の筋硬度が有意に低下したと述べている.
これらの報告から慢性腰痛患者では多裂筋の筋硬度が高く,間欠牽引やストレッチなどの保存的治療によって筋硬度は低下すると考えられる.しかし,筋硬度の低下値が自覚的治療効果と相関するのか否かは不明である.
本研究は,非特異的腰痛症の多裂筋筋硬度測定は治療の指標となるか否かを検証する目的で,間欠牽引と骨盤周囲筋のストレッチによるRoland-Morris生活困難度指数5)の変化量と多裂筋の筋硬度変化量との相関性を検討した.
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