- 有料閲覧
- 文献概要
- 1ページ目
- 参考文献
肝細胞がんの今昔
わが国のがん統計によると,肝臓がん(肝内胆管がんを含む)の罹患者数は2000年代にピークを認め,年間4万8,000人以上に達していました.そして年間死亡者数も3万4,000人を超え,がん死亡原因の第4位となっていました.その多くが肝細胞がんで,原因として肝炎ウイルス感染が大きく影響していました.実際2000年頃の肝細胞がんの原因の約75%がC型肝炎ウイルス(HCV)感染であり,約10%がB型肝炎ウイルス(HBV)感染でした.そのため採血でHBV・HCV感染を拾い上げ,その後定期的に画像検査することで,肝細胞がんの早期診断を目指すスクリーニングシステムが構築されました.その結果,2cm前後の小さな肝細胞がんが多数検出され,ラジオ波焼灼療法などの局所治療で治療できました.一方で多発例や門脈腫瘍栓合併例には,カテーテル治療が行われました.また肝炎ウイルス感染に伴う慢性肝炎および肝硬変を背景にした肝細胞がんが多くを占めていたため,あまり全身薬物療法は発展しませんでした.
その後,HCV感染者の高齢化やHCVに対する抗ウイルス薬の開発により,わが国における肝細胞がんを取り巻く環境は大きく変化しました.最新のがん統計によると,肝臓がんの年間罹患者数は3万4,675人(2021年)まで低下しています.また年間死亡者数も2万2,908人(2023年)と減少し,がん死亡原因の第5位となっています.一方でHBV・HCV感染が原因でない肝細胞がんが増え,全体の約50%を超えています.その原因として,アルコール性肝障害や代謝異常関連脂肪性肝疾患(metabolic dysfunction associated steatotic liver disease:MASLD)があげられます.そのような背景変化のなかで,現時点ではまだ有効なスクリーニングシステムが構築できておらず,大型や転移を伴う肝細胞がんとして診断されるケースが増えています.また背景肝は必ずしも肝硬変にはなっておらず,肝予備能が保たれたケースも多いです.そのため,全身薬物療法が可能なケースが増えてきています.

© Nankodo Co., Ltd., 2026

