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新生児から老人まで日本国民があまねく受検する健康診断(健診)は,わが国における健康維持と疾病の早期発見のインフラであり,とくに成人の健診は,問診,血液検査,心電図検査,胸部X線検査,CT/MRI検査などから隠れた病気を早期発見するものである.これに対し,われわれは近い将来に各個人が発症する可能性のある病気を予測する手法を「AI疾病発症予測健診」と名づけ2021年より社会実装している.具体的には,過去の医療ビッグデータを人工知能(AI)にて解析し,その解析結果から得たルールに現在の各個人のデータを当てはめて疾病発症予測をする.現在,研究レベルでは約50の疾患についてその発症予測が可能となっており,15の主要疾患についてはすでに社会実装されている.われわれのグループは,医療上のビッグデータをAIである尤度関数やBayes統計学を用いて解析する数理科学,LIME(local interpretable model-agnostic explainations)や部分従属プロットなどの機械学習,データマイニングを駆使して疾病ごとに発症予測モデルを立ててきた.とくにデータマイニングは,病気の要因となる何十という通常の健診から得られる因子をすべて組み合わせて,その組み合わせの各々が独立して病気の発症に関わるか否かを調べるという方法であり,生活習慣病,脳・心血管疾患・悪性腫瘍など多因子の組み合わせにより生じる疾病発症予測には適している.データマイニングには「組み合わせの爆発」「ビッグデータのパラドックス」などの欠点があるが,それらを克服するために開発されたのがLAMP(limitless arity multiple-testing procedure)である.われわれはLAMPによる医療ビッグデータ解析にてAI疾病発症予測健診のもとになるアルゴリズムを作成している.今後の医療には,AIと医療ビッグデータを融合させた新しい医学が大きく貢献するものと期待される.
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