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がん薬物療法における抗体薬の動向 ~二重特異性抗体の特徴と看護支援~
菅野 かおり
1
1公益社団法人日本看護協会神戸研修センター
pp.453-460
発行日 2024年7月1日
Published Date 2024/7/1
DOI https://doi.org/10.15106/j_kango29_453
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はじめに
がん薬物療法は全身療法であり,主に進行期がんが適応となっていたが,科学技術の発達などによって対象の範囲は広がりつつある.また,がん細胞の特徴や増殖に関与している分子などが明らかになり,治療の主流であった殺細胞性抗がん薬に代わって分子標的薬,免疫チェックポイント阻害薬などの開発が進んでいる.こうした研究の進歩によって,がん薬物療法のパラダイムシフトが起こると同時に,個別的な治療方法の選択が可能になり,がん患者の生存期間延長に寄与している.
本稿で取り上げる抗体薬は,分子標的薬の一種で1990年頃から開発が進み,日本では2000年以降に多くの薬剤が承認されている.がん薬物療法領域で最初に承認された抗体薬は乳がんに対するトラスツズマブで,続いてB細胞性リンパ腫に対するリツキシマブだった.当初は抗体のみを用いた薬剤であったが,その後抗体に殺細胞性抗がん薬を結合させた抗体薬物複合体(antibody-drug conjugate:ADC)が開発され,さらに2つの抗原に結合可能な二重特異性抗体が開発されている.今回は新薬である二重特異性抗体(bispecific antibody)の特徴と看護支援について述べる.
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